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広島県福山市の2か所のデイサービス施設で利用者を殴るなどしたとして、広島県警福山東署は26日、両施設を経営する同市明神町の介護福祉会社「縁(ゆかり)」の社長で介護士の孫衛容疑者(42)(福山市北本庄)と、両施設で勤務する他の介護士2人を暴行容疑で逮捕した。3人は調べに対し、いずれも容疑を否認しているが、同署は施設関係者の複数の目撃証言から刑事責任の追及に踏み切った。証言では、今回の被害者2人以外の利用者も被害に遭っていたといい、同署は、運営実態を詳しく調べる。

他に逮捕されたのは、介護士・赤井千景(48)(同市南蔵王町)、その長女で同居の同・亜季(27)両容疑者。

発表では、孫、千景両容疑者は共謀して今年6月1日午後2時頃、福山市明神町の「デイサービスゆかりの家」で、男性利用者(84)の顔や胸を数回殴った疑い。

亜季容疑者は9月15日午前10時30分頃、同市北本庄にあり、宿泊が可能ないわゆる「お泊まりデイサービス」も行う「デイサービスゆかりの家北本庄」で、女性利用者(61)の後頭部を蹴った疑い。

同署によると、3人は調べに容疑を否認し、孫容疑者は「どなったりはしたが、殴っていない」、千景容疑者は「暴力をふるったことはない」、亜季容疑者は「身に覚えがない」などと供述しているという。

同署や同市によると、「ゆかりの家」は2008年、「ゆかりの家北本庄」は10年にそれぞれ開所。現在、両施設では、看護師と介護担当の職員ら計14人(逮捕された3人を含む)が勤務し、高齢者は計約30人(被害者2人を含む)が利用している。勤務者は両施設を掛け持ちし、利用者も行き来していたという。

同市によると、今年5月に行った定期指導で問題は見つからなかったが、先月、「利用者が暴行を受けている」との匿名の投書が同市にあり、告発を受けて同署が捜査。複数の施設関係者から逮捕容疑やその他の暴行の証言が得られたという。

施設内の虐待発見困難…件数は増加

 

高齢者福祉施設の職員らによる虐待は増加傾向にあり、事件につながるケースも目立つ。ただ、内部告発や家族らの通報がなければ発覚しにくい状況だ。

厚生労働省の調査によると、2011年度、養介護施設従事者らによる虐待と判断された事例は151件で、前年度より55件増えた。同省が調査を始めた06年度と比べて2・8倍だった。

2012年2月には、神戸市の有料老人ホームで、介護福祉士らが70歳代の女性入所者の頬や腕をたたくなどしたとして、暴行容疑で逮捕された。同年3月には、和歌山県海南市の特別養護老人ホームで、複数の職員が認知症の入所者を揺さぶったり、暴言を吐いたりしていたことが明らかになった。どちらも、家族が撮ったビデオカメラや、隠し撮りのDVDなどによって発覚した。