外国人の日本国内での新規事業立ち上げを促進するための在留資格「経営・管理」で日本に滞在する外国人数が2万人を超え、過去最多を記録したことが28日、法務省への取材で分かった。取得条件緩和により外国人の日本での起業熱が高まったものとみられる。一方、起業家を装った在留資格の不正取得も確認されており、捜査当局は警戒を強めている。
「経営・管理」は平成27年4月の改正入管法の施行に伴い従来の「投資・経営」から名称と要件が変更された。「経営・管理」の在留資格では、500万円以上の資本金▽2人以上の従業員▽事業の経営・管理の経験-などの条件を満たせば、国内で新規事業を立ち上げる外国人に3カ月~5年の在留許可が与えられる。
法務省によると、昨年上半期時点で同資格を得て日本に滞在する外国人は2万117人に達し、初めて2万人を突破した。制度変更後、一気に約2千人増加した。国別では1万52人の中国、2995人の韓国、999人のネパール-と続いた。
ただ、不正に資格を得ようとする者も後を絶たないという。入管関係者は「書面さえ整えれば比較的容易に審査は通る。留学資格で来日し、滞在を延長するために起業家を装う者もいる」と説明する。
【外国人起業家在留資格】ダミー会社でビザ→偽造カード詐欺 申請ノウハウ出回り→代筆闇業者も
2万人を突破した「経営・管理」資格での在留。日本で起業する外国人が増えたのと同時に、実体のない会社を設立して不正に滞在するケースが確認されている。警視庁が昨年摘発した中国人詐欺団のメンバーも、資格を不正に入手して日本にとどまる“偽装起業家”だった。警視庁幹部は「不良外国人の受け皿になりかねない」と指摘する。(安里洋輔)
不自然に並ぶ表札
都内の住宅地にたたずむ古びたアパート。一見何の変哲もない建物で、玄関先にある集合ポストが異彩を放っていた。「○○合同会社」「株式会社××」。ポストには会社の名前らしき表札が並ぶ。警視庁幹部は「多くが『経営・管理』の在留資格を不正取得するために作られた実体のないダミー会社だ」と語る。
これらの一部は昨年9月下旬、警視庁組織犯罪対策特別捜査隊が摘発した詐欺事件に関与した中国籍の男(21)=当時=が作ったダミー会社だ。平成26年4月に留学生として来日した男は、入管当局の目をごまかしてビザの入手に成功する一方で、仲間とともに犯罪に手を染めた。
捜査関係者によると、事件は28年1月から5月にかけて発生。男らは偽造カードを使って都内各所のドラッグストアやコンビニでたばこなどをだまし取る犯行を繰り返していた。組特隊はこの事件で、男を含めたいずれも中国籍の男女6人を詐欺容疑などで逮捕。うち3人が男と同様に経営実体のない会社を設立する手口で、「経営・管理」の在留資格を得ていたとされる。
割合が高い中国人
「経営・管理」の在留資格を得て日本に滞在する外国人数で国別の最多だったのは中国。25年に資格を得て都内にネイルサロンを開業した同国出身の女性(40)は「まじめに働いて事業が順調であれば帰化への道も開ける」と語る。
ただ、入管の審査をすり抜けて不正に資格を得ようとする者も後を絶たず、「不正行為が発覚するのも中国人の割合が高い」(捜査関係者)という。「ビザ申請のお手伝いをします」「成功率高」-。
在日中国人向けの情報紙には、入管への在留資格の申請業務の代行をアピールする行政書士法人や弁護士事務所の広告が目立つ。「中には、依頼者が不正を働くことを知りながら申請業務を請け負う悪質な業者もいる」(同)
関係者によると、一部の中国人の間では、申請のために入管に提出する文書の書式や申請のノウハウが出回っており、起業を偽装するための文書を代理で書く「代筆屋」と呼ばれる闇業者までいるという。捜査幹部は「不正を助長する仕組みができあがりつつある。不良外国人が日本に流入する際の受け皿になりかねない」と危機感を募らせている。
http://www.sankei.com/affairs/news/170129/afr1701290004-n1.html
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