暗号資産(仮想通貨)を巡るトラブルが多発している。国民生活センターによると、4月以降、今月6日までに寄せられた相談は856件で、過去最多だった2018年度(3455件)に迫る勢いだ。海外に投資した資金が戻らないケースが目立ち、韓国では今春、日本人約100人が運用業者を刑事告訴した。(ソウル支局 建石剛、社会部 大塚美智子)
「利益につられ、危険性をよく考えなかった。せめて元金は返してほしい」。韓国の業者が扱う暗号資産に投資した東京都日野市の女性(47)は肩を落とした。
「原資保証型」「紹介報酬あり」「ゲームで資産を増やせる」――。19年8月、著名な投資家のブログで、韓国の業者が扱う暗号資産が紹介された。高い運用益にひかれ、所有していた別の暗号資産で購入した。
紹介報酬を得るため、会社員の夫(52)と父親(73)の3人で計約300万円分をつぎ込んだ。スマートフォンの専用アプリでゲームをすると、1か月で約30万円分の利益が記録された。
約4か月後、利益を含めた約760万円分を引き出そうとした。スマホの画面に「送金手続き完了」と表示されたが、実際の支払いはなかった。業者にメールをすると、「対処します」と返信があったが、やがて連絡が途絶えた。
インターネットで調べると、同様に返金されない日本人が多くいることがわかった。女性ら計約100人は今年3~4月、韓国の弁護士を通じ、4億円超(当時)の暗号資産が返還されていないとして、運用業者の幹部らを詐欺容疑などで告訴した。
国民生活センターによると、海外の業者を通じて暗号資産に投資し、出金ができなくなるトラブルが複数確認されている。マッチングアプリで知り合った異性から「一緒に暮らす資金がほしいので、投資しよう」と誘われた事例もあった。
金融庁、消費者庁、警察庁は今年4月、海外業者を含む無登録業者の勧誘で暗号資産に出資した後、連絡が取れなくなるケースがあるとして注意を呼びかけた。国民生活センターの担当者は「投資する際はリスクを十分に考慮し、日本国内で登録された業者を介して取引してほしい」と話す。
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